聞き流して覚えるだけ!!「うちな~ぐちラーニング」

公開日 2014/11/20

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いま県内外で話題沸騰のCD「うちな~ぐちラーニング」。ん? なんだかどこかで聞いたことのあるネーミング!? 一体どんな内容なのか? 浦添市にあるデザイン事務所「メイドインオキナワドットコム」が企画・制作したという噂を聞きつけ、真相を確かめに突撃インタビューに出かけてきました!!!

うちな〜ぐちラーニング

CDに出演しているのは、あの八木政男さん!! 長年、ラジオやテレビ、舞台にと大活躍していて、ウチナーンチュなら誰でも知っている有名人に会えると知り、ちょっと緊張気味の「うらそえナビ」スタッフ(汗)。沖縄芸能界の重鎮に失礼があってはいけないとドキドキしながら、羽地裕治さんが運営する「メイドインオキナワドットコム」の事務所を訪ねました。

八木政男さん、登場!

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─今日はお時間を作っていただいて、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。


八木さん:何十年くらい前になるかなぁ。僕は、浦添市役所で方言講座をやったことがあるんですよ。戸籍課とか民生課など役所の人にうちな~ぐちの研修をしたんです。おじいちゃん、おばあちゃんが受付に来たとき、うちな~ぐちで迎えるためにね。「ちゃんぬ用事やいびーんが(どういったご用ですか)」とか「まーんかんめんしぇーんが(どちらに行かれるのですか)」とか、声をかけるんです。
(浦添との関わりを優しく話してくれる八木さん。気さくな人柄に、一気に緊張がほぐれるうらナビスタッフ)

 

─それはいい取り組みですね。最近は、警察官とか医者もうちな~ぐちを勉強するようになってきましたよね。

 

八木さん:そうだね。那覇市役所とかは「はいさい!」から挨拶を始めるよね。「はいさい」はいい言葉だよ。「はいさい」と言われて怒る人はいないから。「はいさい」は敬語だけど、目上の人が下の人に「はいさい」と言っても別に構わない。初めて会った人でも、何でも「はいさい!」から始めるわけ。だから、僕は「はいさい」という言葉が大好き。

 

─うちな~ぐちで、最初に覚えたい言葉ですね。

 

羽地さん:ハワイでいうと「アロハ!」ですね。


八木さん:そうだね。ところが「アロハ」は、「こんにちは」だけじゃなく「さよなら」も、何でも「アロハ」なんだよねぇ(笑)。うちな~ぐちで「こっちへいらっしゃい」は「めんそ~れ」って言うでしょ。でも、「あっちへ行きなさい」は「あまんかい、めんそ~れ」って言うよね。だから同じ「めんそ~れ」でも、ニュアンスが違うと意味が変わるんだよね。

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八木政男さん

こんな教材が欲しかった!

 

─羽地さんが「うちな~ぐちラーニング」を作ろうと思ったきっかけは何ですか?

 

羽地さん:僕らの世代はあまり方言が話せないので、うちな~ぐちの教材が欲しかったんですよ。どうやったらできるか考えていたとき、英語の「スピードラーニング」がヒントになりました。そこで八木先生に出演をお願いしたところ、「上等だよ!」と言われて快諾いただきました。八木先生に断られていたら、このCDは作れなかったですねぇ。

 

─CD制作で、苦労したところはどこですか?

 

羽地さん:レベルに合わせてやった方がいいだろうと思っていたので、沖縄方言140単語を収録した「初級編」、日常語80編を覚える「中級編」、沖縄を楽しく旅しながら歴史・社会・文化も覚える「上級編」の3つに分けて台本を作りました。どの言葉を入れるかは八木先生と相談しながら決めたのですが、実際に録音してみて、現場で変えたところもありましたよ。

 

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羽地裕治さん

 

八木さん:うちな~ぐちに訳せない大和ぐちがあるんだよな。うちな~ぐちは言葉の数が少ないから訳せない言葉もあるし、逆に大和ぐちにはないうちな~ぐちもあるしね。そういうところが難しかったかな。

 

─確かにそうですね。「ちーちーかーかー」とか「むちゃむちゃ」って、標準語に訳せないですよねぇ。

 

八木さん:うん、そう。「ちーちーかーかー」は難しいねぇ。「むちゃむちゃ」というのは、「むっちゃかとーん」という餅みたいな感じだから、それに近い。「やんむち」って知ってる? 昔はやんむちを作って、くっ付けてメジロを捕まえたんだよ。僕らが子どもの頃は、ガジュマルの幹を突いて白っぽいエキスを溜めるわけ、それを竹の先に付けてやんむちを作る。「餅」はうちな~ぐちでは「むち」になるからね。

 

─訳せなくて、CDに入れるのを諦めた言葉もありますか?

 

羽地さん:たくさんありますねぇ。こっちの方が分かりやすいだろうと、表現を変えたりもしましたし。


八木さん:つい先日「首里城明け渡し」という、国立劇場おきなわでの舞台を演出したんだけど、僕は昔も先輩たちと「首里城明け渡し」の舞台を踏んでいる。あの頃はね、「琉球」のことを「るーちゅー」と言っていて、それから「りゅーちゅー」になった。でも今は「るーちゅー」と言ってもピンとこない。だから今回は、「琉球」「清国」「中国」と今でも通じる国名にしたんだよ。今に合わせて変えたから、先輩方からいろいろ批判がくるだろうなぁと思って待っているんだけど、まだこないな(笑)。

 

─今は通じない言葉って多いでしょうね。

 

八木さん:国立劇場おきなわでは舞台の横に字幕が出るから、字幕を見て分かったという人も多いね。60代の人でも。だから、若い役者たちと相談して言葉を変えたんだよ。

 

─そのあたりは難しいですよね。昔の言葉のまま残したいけど、使っても通じないというジレンマがあるでしょうね。

 

八木さん:但しね、観るお客さんが分からなくてもいいから、これだけは使おうと決めた言葉があるんだよ。国王が亡くなることを「うしじりんそーちゃん」というんだけど、「う」は「御」で、「しじりそーちゃん」が「退いた」。「この世から退いた」という意味。国王に向かって「お疲れでしょうからお休みください」というセリフも、昔の言葉のまま使った。お客さんが分からなくても、なぜ敢えてこういう言葉を使ったかと言うと、こういう言葉を若い役者にも知ってもらわないと、今後、史劇はできないだろうと思って。だから役者たちは、苦労してセリフを覚えていたよ。

 

─今は聞かない言葉ですし、役者さんは大変ですね(八木さんが話す長いセリフを聞いて、お手上げ状態のうらナビスタッフ)。

 

八木さん:「来る」ことを「ちゅーんろー」と言うのは普通の言葉。「めんしぇーんろー」は敬語ですよ。さらに上は「いめんしぇーんろー」、そして「うちぇーんしぇーんろー」となる。これは「うぐしく(御城)言葉」といって、普通の言葉ではないわけ。この言葉は「すいうぐしく(首里御城)」で使われていて、家庭では使われない。「食べなさい」も「かめー」は普通の言葉でしょ。「うさがみそーれー」は敬語、うぐしく言葉では「うゎがんせーびり」と言う。


羽地さん:うぐしく言葉は、究極の敬語ですよね。


八木さん:今はうぐしく言葉を使うのは、芝居にしか残っていないね。だから芝居がある限り、こういう言葉を残していかないといけない。恐らく、芸歴では僕が一番上だからねぇ。昭和18年が最初の舞台。

 

─芸歴70年ですか!

 

八木さん:ラジオ番組の「民謡で今日拝なびら(ちゅーうがなびら)」も52年になるよ。

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うちな~ぐちの共通語「芝居言葉」

 

─CDを購入したお客さんたちの反応はいかがですか?

 

羽地さん:今までこういう教材がなかったので、評判はいいですね。僕もそうだったんですが、今まで書物で勉強していた人が多くて、どうしゃべったらいいのか本では分からないんですよ。

 

─そうですね。読んだだけでは、イントネーションが分からないですよね。

 

八木さん:うちな~ぐちでは、イントネーションが特に大事。例えば、「おいしい」は「まーさん」と言うでしょ。これを「(まにアクセントを付けて)まーさん」と言ったら「死んだ」という意味になってしまう。「瓦」のことを「かーら」というけど、「(かにアクセントを付けて)かーら」と言うと「川」。イントネーションで全然意味が違う。


羽地さん:だから音で聞くのが大事なんですよね。


八木さん:音を聞くとしっかり分かる。ところがね、糸満だとまた違うんだよ。でもその前に付く言葉で意味が分かるんだね。

 

─地域によって、言葉やイントネーションが変わるんですね。

 

八木さん:驚きを表す感嘆詞ひとつとっても、「はんまおー」と言ったら糸満、「あぎじゃべ」は小禄、「おーい」は北谷、こういう風に変わる。北谷が舞台の芝居だと、セリフの最後に「おーい」と付けるよ。石川や金武も北谷からの流れで「おーい」と言うね。


羽地さん:「丘の一本松」は「おーい」って言いますね。

 

─他の地域の人には分からない言葉も多いですね。

 

八木さん:シマ言葉というのは、シマの人にしか分からない。「お笑いうちな~ぐちラーニング」に出演したじゅん選手は北中城出身だから、彼が話す言葉は北中城のシマ言葉なんだよね。だから僕たちが芝居をするときは、首里・那覇の言葉をベースにした「芝居ぐち(芝居言葉)」というのを使うんだよ。戦前から使われているうちな~ぐちの共通語みたいなもんだね。どこでも通じるから、どの地域で芝居をしても笑いが起こる。


羽地さん:「うちな~ぐちラーニング」では、この「芝居言葉」を使っています。沖縄タイムスが販売元でネット販売のほか、全国のわしたショップ、那覇空港、県内のCDショップや書店などで販売しています。

 

─じゅん選手バージョンが生まれたきっかけは?

 

羽地さん:「初級編」「中級編」「上級編」は教材なので、八木さんに出演してもらい、きちんと作ったのですが、もっと若い人たちにも興味を持ってもらって、言葉を伝えていかなければと、笑って覚える「お笑いうちな~ぐちラーニング」を作りました。

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「うちな~ぐちラーニング」に関することだけでなく、沖縄の歴史や偉人の話、沖縄芝居の思い出話、海外に移民した人々が大切に守り続けているうちな~ぐちの話にまで話題は及び、あっという間に楽しい時間が過ぎました。みなさんもぜひ、うちな~ぐちの達人・八木さんが出演・指導している「うちな~ぐちラーニング」を聞いて、キレイな正しいうちな~ぐちに触れてみてくださいね。

うちなーぐちラーニング

プロフィール

八木 政男さん
名前
八木 政男さん
お仕事
沖縄県指定無形文化財 琉球歌劇保持者
琉球歌劇保存会 相談役
RBCラジオ「民謡で今日拝なびら」「多良川プレゼンツおもしろ文化講座」、NHK Eテレ「うちなーであそぼ」パーソナリティー
出身
那覇市
年齢
84歳
受賞歴
浦添市制20周年・文化功労賞、春の叙勲旭日双光章、第50回沖縄タイムス文化賞、島袋裕生一百年記念芸術文化賞、沖縄県文化功労賞、
第29回沖縄タイムス芸術選賞演劇の部大賞、沖縄タイムス社芸能選賞・奨励賞、野村流古典三線の部最高賞、その他
メッセージ
先人たちが作った貴重な言葉をみなさんも大切にしてください。耳で聞いて、うちな~ぐち独特のニュアンスをぜひ覚えてほしいです。
羽地 裕治さん
名前
羽地 裕治さん
お仕事
メイドインオキナワドットコム はなやかす課 親方
出身
那覇市
年齢
50歳
Webサイト
メッセージ
絶対なくしてはならない言葉があります!聞き流すだけだから勉強しなくていい、聞き流して覚えるだけの「うちな~ぐちラーニング」をよろしくお願いします。

※この記事はに作成されました。公開時点から変更になっている場合がありますのでご了承ください。