ヘビ革をあやつり革細工を生み出す女性職人

公開日 2015/03/14

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名前
石嶺貴子さん
お仕事
革職人
出没スポット
石嶺商事(弁財工房)
出身地
沖縄県
情報
石嶺商事二代目の奥様
フィード情報

女は強し。ヘビ革細工の工房を守り続ける隠れた名人たち

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「わたしなんかはまだまだですよ」。そう言いながらも、慣れた手つきで長財布を加工する革職人の石嶺貴子さん。ヘビ革を中心とした革細工を生み出す石嶺商事の、若き二代目を支える奥様です。

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「普段はほとんど人を入れることがないので」と笑いながら案内してくださった工房は、革のロールや切れ端、専用の工具がそこかしこに見てとれ、いかにも職人の仕事場といった雰囲気が漂っています。

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牛革ならいざ知らず、加工前のハ虫類の革を手に取ったことがある方は少ないのではないでしょうか。ここが手で、ここが背中で…と一目で分かるその形状は、思わず息を飲むような迫力です。

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こちらはニシキヘビの革ですが、なにやら模様が異なるように感じられます。その違いは、切り口。右が腹から切ったもの、左が背中から切ったものなんですね。ひと手間の違いで雰囲気がガラリと変わるのも、ヘビ革ならではの醍醐味と言えるでしょう。

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それらの革を「刃型(はがた)」と呼ばれるこちらの鉄枠で裁断します。

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刃型はデザインによって数が違います。写真のものは10種類で、それぞれ違った型が切り抜けるような造りに。模様によっては、20~30種類の型を使うものもあるというから、何だか気の遠くなるような作業です。こうして切ったものを手作業で縫い合わせて、ひとつの長財布が生まれるのですね。

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石嶺商事は、創業して40年。1975〜6年に開催された沖縄国際海洋博覧会の際に、土産物として紅型小物を作ったのが始まりだったといいます。そこから、25年ほど前に扱ったヘビ革が好評を得たことをきっかけに、今ではヘビ革を中心に制作を行う県内随一の工房にまで成長。貴子さんがヘビ革を触るようになってからは5年ほどが経つとのことですが、「簡単な作業しかできないです。難しいところは、まだまだ。ちょっとずつ手伝えるようにはなっていますけれど…」と笑いながら話します。

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しかしながら、流れるような手さばきは、見ていてうっとりするほど。貴子さんに並んで作業をする野原さんも、無駄のない動きで淡々と工程をこなします。それもそのはず、野原さんは22年ものあいだ石嶺商事に勤める陰の功労者。「一代目と二代目は物産展で出ていることが多いので、その間はわたしたちだけですね」と、二人は手を動かしながら笑います。

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最後に写真を撮らせてくださいと声をかけると、息を合わせてポーズを決めてくれました。多くは語らず、しかし、男性の留守はしっかりと守り続ける。縁の下でコツコツと作業を続ける女性たちがいる限り石嶺商事は安泰! そう思わせる、なんとも心強い二人組なのでした。

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