沖縄の伝統芸能の殿堂「国立劇場おきなわ」へ行こう! 5分でわかる! 浦添市が誇るユネスコ世界無形文化遺産「組踊(くみおどり)」
公開日 2020/03/24
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みなさんは「組踊(くみおどり・くみうどぅい)」を知っていますか? 組踊は1972年に国の重要無形文化財、2010年にユネスコの無形文化遺産となり、2019年には初演から300周年を迎えた、沖縄が世界に誇る伝統芸能です。
浦添市にはその殿堂「国立劇場おきなわ」があり、より多くの方に沖縄の伝統芸能に親しんでもらえるようにと、古典・新作組踊をはじめとするさまざまな舞台公演を行なっています。
国立劇場なんてちょっとハードル高そう…なんて思う方もいるかもしれませんが、実は公演ごとの入場料は2000〜5000円ほど。演者のパフォーマンスはもちろん、きらびやかな衣装や美術・演出まで、完成度の高い作品が気軽に楽しめる場所なんです。
今回は、旅のつれづれに国立劇場おきなわで沖縄の伝統芸能や歴史・文化に触れてみたいという方のために、これを知っておけば作品鑑賞がもっと楽しめる、組踊のキホンや誕生秘話などをご紹介しましょう。
まずは「組踊」のキホンから。さらに琉球王国の歴史をさかのぼってみると…
「組踊(くみおどり)」は、唱え(となえ=台詞)と音楽、所作(踊り)によって構成される沖縄独特の歌舞劇です。セリフを唱え、所作を行う「立方(たちかた=演者)」と、歌三線(うたさんしん)、琴、笛、太鼓などで音楽を担当する「地謡(じうたい=演奏者)」が一体となった演劇で、「組踊を聴く」といわれるほど音楽性が高い芸能でもあります。
また、組踊が生まれた当初、組踊の担い手は王府に勤務する士族とその子弟ですべて男性だったのです。沖縄の伝統芸能というと、華やかな紅型(びんがた)の衣装をまとった女性というイメージがあるかもしれませんが、ちょっと意外ですよね。
まずは、そんな組踊誕生前の歴史を紐解いてみるとしましょう。東アジアと東南アジアを結ぶ交易の中核拠点として独自の文化を育んできた琉球は、15世紀の琉球王国時代に中国(当時の明)と朝貢関係を結びました。
それにより琉球国王の代替わりの際に中国から「冊封使(さっぽうし)」と呼ばれる使者が派遣されるようになりました。琉球王府は士族らからなる「踊奉行(おどりぶぎょう)」という役職を組織し、中国からの使者をもてなすために「御冠船踊(おかんせんおどり)」を上演しました。さらに江戸時代になると琉球は薩摩藩の支配も受けるようになり、徳川将軍や琉球国王の代替わりの際に江戸へ使節団を派遣するようになります(江戸上り)
琉球王府のエンタメ担当大臣・玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)によるおもてなしミュージカル!?
組踊の創始者は、1718年に踊奉行に任命された王府の役人・玉城朝薫(たまぐすくちょうくん 1684年~1734年)。1719年の尚敬王(しょうけいおう)の冊封式典の際に「御冠船踊」の演目として組踊「二童敵打(にどうてきうち)」と「執心鐘入(しゅしんかねいり)」が初めて上演されました。
朝薫は江戸上りなどの公務で薩摩や江戸に7回出向いており、そこで能や狂言、歌舞伎などの大和芸能に触れたといわれています。琉球国内でも中国戯曲を鑑賞するなどし、芸能への造詣を深めました。そして琉球古来の芸能や故事を基礎に、大和芸能や中国戯曲にヒントを得て、生み出したのが組踊なのです。
組踊のテーマは、儒教道徳の「忠」「孝」や王府に強く関わるものがほとんどで、冊封使に好評でした。御冠芸能の充実が図られていくうちに、次第に組踊は地方の村踊りの舞台にも登場するようになります。そして1800年代には、士族により創作された組踊が地方で上演されるなどして、沖縄全土に広がっていきました。ちなみに写真は多良間島に伝わる「8月踊り」の様子。豊年祭の目玉演目として、今でも組踊が受け継がれているんですよ。
朝薫が創作した「二童敵打」「執心鐘入」「銘苅子(めかるしー)」「女物狂(おんなものぐるい)」「孝行之巻(こうこうのまき)」は「朝薫の五番」と呼ばれ、現在でも人気のある完成度の高い作品です。沖縄が日本に復帰した1972年5月には、優れた伝統芸能として「雅楽」「能楽」「文楽」「歌舞伎」と並ぶ国の重要無形文化財に指定されました。
さらに2010年11月には、ユネスコの無形文化遺産保護条約に基づく「人類の無形文化遺産の代表的な一覧」に記載されました。琉球王国時代に生まれた組踊は、今では県外や海外でも上演され、世界中の人々を魅了しています。
ここが組踊の本場。国立劇場おきなわへでかけよう
「国立劇場おきなわ」は2004年1月に浦添市に開場しました。1年を通し、組踊、琉球舞踊、琉球音楽などの公演が行われています。琉球王朝時代から受け継がれてきた伝統ある作品はもちろん、現代風にアレンジされた親しみやすいオリジナル演目などの公演もあります。
公演情報はこちらから。
劇場1階にある「大劇場」(632席/プロセニアムステージ時)は、伝統芸能の上演を想定した設計で、張り出し舞台と歌舞伎でお馴染みの花道の両方の機能を備えた可変式の舞台です。組踊の上演時には、舞台の横に字幕が表示されますので、ウチナーグチ(沖縄方言)が分からない方も楽しんで観ることができますよ。
劇場1階にある「展示資料室」では、上演されている演目に合わせ、実際に舞台で使われている衣装や小道具、台本など、貴重な資料が展示されています。衣装や小道具の名、所作の意味なども丁寧に説明されているので、作品の内容をより深く知ることができます。ここを訪れてから鑑賞すると、さらに作品を楽しめると思いますよ。
上演作品のチケットは、劇場1階にある「チケットカウンター」で販売しているほか、県内プレイガイドやインターネットでも購入できます。
チケット購入の詳細はこちらから。
また、鑑賞の前後にぜひ訪れてほしいのが、劇場2階にある「レファレンスルーム」です。組踊をはじめ、沖縄や日本の芸能・音楽・芝居に関するさまざまな資料が閲覧できます。初心者でも楽しく組踊について学べるように、紹介DVDやパンフレット、書籍などもありますので、ぜひ足を運んでみてくださいね。
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施設名 | 国立劇場おきなわ |
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住所 | 沖縄県浦添市勢理客4-14-1 |
お問い合わせ先 | 098-871-3350(国立劇場おきなわ チケットカウンター) |
WEBサイト | https://www.nt-okinawa.or.jp/ |
アクセス | 那覇空港から車で約20分(時間帯による) |
駐車場 | 無料 209台 |
地図
国立劇場おきなわ
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