ドライブde湧き水巡り[by湧き水fun倶楽部]

公開日 2013/10/27


名泉、羽衣伝説・・・物語に出会える“湧き水”旅へ

グスク(城)は、見晴らしの良い高台にあるだけでなく、水場が確保されていることをご存知でしょうか?首里城以前、古琉球という時代に約220年間の栄華を極めたとされる浦添グスク周辺にもやはり多くの水場があります。車なら、2、3時間で巡れる湧き水のコースをご紹介!

1.元旦行事の名泉 澤岻樋川(タクシヒージャー)

2.昔ながらの言い伝え 龍巻井(ルーマシガー)

3.あの刻印は必見! 井大人川(イノウシガー)

4.天女の湧き水 立津ガー(タチチガー)

5.多くの人に親しまれた 牧港ガー(マチナトガー)

6.戦前の姿を残す 仲間樋川(ナカマヒージャー)

*井戸はカー(ガー、ジャー、ハー、ケーとも言います)、川はカーラ、樋から水が流れ落ちる所はヒージャー・・・と、湧き水には多くの種類があります。貴重な水場だったからこそ、様々な呼び方で区別されていたのかもしれませんね。水場を巡りながら、その呼び方にもぜひ着目を!

 

元旦の朝に首里城お水取り行事のための「若水」を汲む、澤岻樋川の水は1000年以上前から知られる名泉です。

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古琉球時代より、新年を前に国王と国民の健康と長寿、国の繁栄と五穀豊穣の祈って、国頭村辺戸の大川と首里城周辺の吉方(恵方)にあたる水を奉納し、王に献上するお水取りの行事があります。

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1731年に書かれた「琉球国由来記」によれば、澤岻樋川は首里城周辺の吉方(恵方)にあたる湧き水のひとつとして、国王に若水を献上した水としても知られています。120年ぶり(平成10年)に復活したこの行事は、毎年12月に国頭村辺戸の大川と浦添市の澤岻樋川にて実際に行われます。平成25年は、12月22日午後2時予定(時間は前後する場合があります)。

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澤岻樋川は“ウトゥーシガー”とされています。崖下の岩とクチャの間から湧いた水が自然の洞窟の中に溜まり、濁りのない豊かな水量が特徴の湧き水です。ウナギやモズクガニの目撃情報もあるのだとか。※ウトゥーシ(御通し):神の居所が険しかったり遠い場合に、一般的に設けられる遥拝所のこと
■場所:浦添市澤岻1-46

 

D-龍巻井(入替)

今は使われていない昔の湧き水も、沖縄では地域ぐるみで大切にしています。経塚の道路の一角にある石碑には、「日照りのとき、龍が天に立ち上るのを観て掘ったところ、水がこんこんとわきでたところから名前がついた」と刻まれています。
■場所:浦添市経塚652-1(サンエー経塚シティ内)

 

井の大人川2

明治時代、7ヶ月間もの間、日照りが続いたときでさえ水が枯れることがなかった井の大人川は、「大人」と書いて「ウシ」と呼ぶ尊称がつきます。井の中でも尊い井を意味し、地域の呼び名はイノーシガーと言います。首里王府から授かった名称だとも言われています。というのも、浦添城の前には広大な田んぼが拡がっており、集落名に「前田」という名前がついたほど。

井の大人川3

写真から、見えるでしょうか・・・?戦後、コンクリート製のタンクに改修されたときに工事費用を寄付した、沖縄コカ・コーラのウィリアム・イーマチェット氏の名前が大きく刻まれています。水道の普及前は飲用に、今はご近所の雑用水として、今も変わらず蛇口から豊かな水量を輩出しています。
■場所:浦添市字前田693番地付近

 

立津ガー

天人由来(羽衣伝説)や英祖王との関わりがあるとされ、「琉球国由来記」によるとグスクの用水にも利用されていた由緒ある場所です。

立津ガー2

数十年ほど前は、水の豊かな場所で周囲に田んぼが広がっていました.立津原(タチチバル)にあることからタチチガー、また伊祖にあることからイージュガーとも呼ばれています。

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かつては洞窟(ガマ)の中から水が湧き出ていて、飲料水や洗濯、人や馬の水浴び場として使う場所が分けられていたようです。現在は、改修されて形も変わり、浄化制御装置が設けられ農業用水になっているのだとか。
■場所:浦添市牧港2-5-10

 

マチナトガー

かつて、夕方になると水浴びをする人で賑わったマチナトガーは、またの名をシマヌカー、ウブガーとも呼びます。お正月の若水が汲まれた湧き水は美味しく、美味しいエビまで獲れたのだとか。昔、西側にあった闘牛場(ウシモー)で観戦しながらこちらの水を飲んだりもしたそう。※ワカミジ(若水):元旦の日に初めて汲む井泉の水。家族の健康を祈願するために仏壇やヒヌカンと呼ばれる火の神に供えます
■場所:浦添市牧港2-44-1

 

住宅地の一角に姿を現すこの場所は、

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かつて、水撫でぃ(ミジナディ)のための産水(ウブミジ)を汲んだ産ガーとして、また元旦の若水を汲む場所として大事にされてきました。※ミジナディ、ウビナディ(水撫でぃ):ウビー(汲んだ水)に中指を浸し、祈りをこめて額を撫でる儀式のこと。沖縄では生まれた子に、元旦の日に子どもたちに、結婚式の花婿花嫁に、水撫でぃをしたそう

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現在残る石積みは戦前からのもので「琉球国旧記」によると、その頃から樋が掛けられていたそう。

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旧暦の5月、6月のお祭り(ウマチー)や12月の御願解きなど、今も沖縄の暮らしに欠かせない年中行事には地域ぐるみでムラ拝みをし守っています。

なかまひーじゃー2

写真の十字は「そこから先では洗濯をしてはいけない」という刻印で、十字印より手前の場所で、昔は洗濯やウマアミシ(馬の水浴び)が行われていました。水の流れを利用し、飲用水→洗濯用水→雑用水→灌漑用水と、貴重な水を再利用する工夫が当時からありました。当時の家庭には井戸はほとんどなかったので地域の共同井戸として、戦後は仲間収容所に集められた数千人の浦添村民の生活水として、人々の暮らしを支えてきました。※雑用水とは、農具や農作物の水洗い、馬の水浴びなどに使う水のこと

仲間樋川は、浦添市の文化財に平成14年度に指定され、平成21年度には復元整備されています。
■場所:浦添市仲間2-44

 

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湧き水fun全員集合写真 (1)

ラジオ沖縄にて、平成6年から15年間『うちなぁ湧き水紀行』のパーソナリティーを担当した2人が放送終了後、沖縄県内600箇所の湧き水に関する聞き取り調査の記録を何かの形で地域に還元したいと考え、自然・文化・歴史・環境・防災をキーワードに『湧き水』に関する情報収集と発信を継続中!平成22年の発足を皮切りに、浦添市のまちづくりプラン賞を受賞した「浦添市湧き水MAP」を制作。あわせて湧き水めぐりや湧き水に関する勉強会、講演会、簡易水質検査等を精力的に実施。依頼があれば、講師やガイドの派遣、資料作りも行う。平成25年3月には浦添市のまちづくりプラン賞の助成を受け、小冊子「浦添の湧き水」の発行を手掛けた。

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