沖縄の家庭料理でもてなす達人

公開日 2013/11/13

母さんの手料理を、やちむんの器で。家族が一心同体、ちゅらさんの“台所”

 

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台所をとりしきる“母さん”の手料理を、やちむん(読谷村)の器に盛り付ける。やちむんの里で見習いとして働いていた、娘さんの器もテーブルに並ぶという。お店の切り盛りは、息子さんの担当だ。お店の奥では、まだ1歳のお孫さんが遊んでいた。「ちゅらさん」の扉を開けると、すぐ靴をぬいで畳にあがるスタイルは、まるで親戚の家にお呼ばれしたかのような雰囲気だ。母さんは独学だと謙遜するが、“みぬーだる”(琉球王朝の料理)も手がけたことがあるという。流石、首里出身と思いきや、東京は大田区で13年近く、ママとしてお店を開いていたのだとか。

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東京のお店時代は、「ちいさんぽ」の亡き地井武夫さんが来店したり、一世を風靡した、あの人気TV番組「どっちの料理ショー」では沖縄そば代表の「町の応援団」として出演を果たしたことも。その沖縄そばは、昆布、鰹、豚骨とそれぞれ別に取ったお出汁を最後に合わせる、濁りのない風味が自慢の一品だ。沖縄そばに欠かせないソーキ(豚肉)は「味が違うから」と、必ず県産豚を使う。圧力鍋は使わず、ことこと、ことことと5時間以上かけて、お鍋でじっくり煮こむソーキは濃厚なのにしつこくなく、骨までぷるぷると柔らかい。

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居酒屋とはいうものの、沖縄の家庭ではごく当たり前に食卓にのぼる“ハンダマ”や“ニガナ”といった、おなじみの野菜たちのお惣菜がメニュー表に並ぶ。まるで家での食事のように、野菜がたっぷり摂れそうだ。沖縄そばのソーキ同様に、お刺身やグルクンの唐揚げ、魚のマース煮(塩煮)も、すべて県産。リンゴとゴーヤーだけのシンプルなゴーヤージュースも、国内産の材料にこだわる。味にこだわる故に、「材料はケチらない」と母さん。

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注文が入ると、母さん自らが手際よく素揚げする“どぅる天”は、さくさくなのにターンム(田芋)のやわらかい食感はそのまま。手で成型するときに片栗粉をまぶすの、と母さんは惜しげもなく料理のコツまで教えてくれる。一口食べると、ずいき(田芋の茎)や椎茸も顔をのぞかせる。ターンムそのものに、お出汁の味がしっかりしみていて、添えられた粟国の塩を加えなくても充分に味わい深い。ちなみに、どぅるわかしー(田芋の伝統料理)もおてのものだそうだが、できたてを食べるのがおいしいから、とメニューには敢えて載せていない。塩か砂糖醤油をお好みで選べる、ターンム(田芋)揚げもおすすめだ。

☆じーまーみー豆腐

2012年12月に東京から浦添にお店を移転オープンさせたばかり。なじみ客が懐かしい味を求めて、沖縄を訪れたときには、わざわざお店に足を運んでくれることも少なくないのだとか。そんなとき必ずオーダーがあるのが、自家製のジーマーミー豆腐だ。国内産のピーナッツに芋くずなどを使ってとろみを出し、黒砂糖と醤油をじっくり煮つめた自家製のたれをかける。一日がかりで作るジーマーミー豆腐は、スプーンを入れると、ふるふると揺れ、豆腐というよりスイーツのよう。口に入れると、舌の上でそのまますっと優しく溶けていく。リピーター続出のメニューは、イカスミそーみんチャンプルーやイカスミ焼きそば、イカスミ汁・・・と母さんからメニューがどんどん口をついて出てくる。食べきれないときには、次の旅のお楽しみにとっておくことにしよう。

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お名前
 森元 美津子さん
お仕事
 台所担当。新しいメニューも考える
出没スポット
 「ちゅらさん」近辺
出身地
沖縄県那覇市首里
情報

メニュー表にない、お客の食べたいものを材料と時間さえあれば手際よく作ってくれることも

 

 

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