シネマ組踊「執心鐘入」の魅力に迫る!

公開日 2014/11/10

組踊「執心鐘入」が映画化!! 演者のお二人にインタビュー

2014年2月に公開された『シネマ組踊「二童敵討(にどうてぃちうち)」』は、本邦初の沖縄が誇る総合芸術「組踊」の映画化でした。そして、ついに第2弾『シネマ組踊「執心鐘入(しゅうしんかねいり)」』が2015年に公開!組踊を初めて観る方やより深く知りたい方に向けて、あらゆる視点から組踊の魅力を撮影した『シネマ組踊「執心鐘入」』について、地方・新垣俊道さんと立方・佐辺良和さんに見どころを伺ってきました。

子どもの頃から伝統芸能に夢中

シネマ組踊「執心鐘入」

─お二人が三線や琉球舞踊を始めたきっかけと自己紹介をお願いします。

 

新垣さん(左):小学校4~5年の頃、子ども会の活動がきっかけで三線を始めて、中学1年の時に叔父の新垣一雄先生に弟子入りし、本格的に古典音楽を学び始めました。その後、南風原高校郷土文化コース、沖縄県立芸術大学院まで進み、国立劇場おきなわの第1期組踊研修生として3年間学びました。

 

佐辺さん(右):姉が琉舞をやっていたので家に琉球舞踊のテープや扇子があって、小さい頃からそういうのを使って勝手に踊っていたらしいんです。それで変なクセが付いてしまわないうちにと、6歳の時に琉舞研究所に入れさせてもらいました。それからずっと琉舞を続けていて、沖縄県立芸術大学に入学し、大学院が終わる頃、(新垣)俊道さんと同じように第1期組踊研修生として3年間の研修を終えました。今は俊道さんを会長とする「子の会(しーのかい)」の事務局長をしています。

 

新垣さん:二人とも、芸大の非常勤講師も勤めています。

 

─新垣さんは小さい頃から三線に興味があったのですか。

 

新垣さん:そんなに興味はなかったですよ。でも、十五夜や生年祝いなどの行事が毎年のように地域で行われていたので、三線を耳にする機会は多かったですね。家でも父がよく弾いていました。

シネマ組踊「執心鐘入」

─佐辺さんが組踊に興味を持ち始めたのはいつ頃ですか。

 

佐辺さん:小学校高学年くらいから組踊は知っていました。実際に舞台を見て、「執心鐘入」の宿の女をやってみたいと思っていたんです。大学の授業のなかに「組踊」があるので、そこで初めて組踊をやりました。

 

─えー!凄いです!!小さい頃から憧れていた役を今演じているなんて、夢が実現したんですね。演じてみて、琉舞との違いや難しいところはありましたか。

 

佐辺さん:組踊は琉球舞踊にセリフが付くんですが、すべて琉球古語なので、その言葉を理解するのが難しかったです。それに、セリフが音楽になっているので音階があって、普通のお芝居のセリフともまた違うんですよね。その音程を取るのが、僕には一番難しいところでしたね。歌は全然やったことがなかったので(苦笑)。

シネマ組踊「執心鐘入」

─立方(たちかた)と地方(じかた)について教えてください。

 

佐辺さん:立方は演技をする役回りです。

シネマ組踊「執心鐘入」

新垣さん:地方は地謡(じうてー)ともいいますが、歌三線や筝・笛・胡弓・太鼓などを演奏をする人です。古典音楽として演奏する場合と、舞踊の伴奏、組踊の大きく分けて3つあるのですが、それぞれ演奏法が変わります。それに、組踊では同じ曲でも歌詞が変わるので、その心情に合わせた演奏になります。

 

─最近出演した舞台は何ですか。

 

佐辺さん:10月に国立劇場おきなわで行われた企画公演「ゆらてぃく遊ば」に出演しました。国立劇場おきなわ初の俳優祭で、組踊「二童敵討」の後日談を描いた嘉数道彦さんの新作喜劇や、女性舞踊家の先生方による歌劇を上演して、楽しいファンサービスデーになりましたよ。チケットも完売して好評だったので、また来年も違う作品でやりたいですね。「ゆらてぃく遊ば」は毎年行われている企画なので、これから大きな期待を寄せているイベントのひとつです。

 

新垣さん:最近のなかで一番印象に残っているのは、国立劇場おきなわで行われた重要無形文化財保持者による「琉球舞踊特選会」です。出演していたのは、私が三線を始めた頃にテレビで観ていた憧れの先生方で、雲の上の人。そんな方々の舞台に地方として出演させていただいて、本当に夢のようでした。歌三線は全員が若手だったのでプレッシャーもありましたが、それ以上に得るものがとても多くて本当に良かったです。それに昔の話もいろいろ聞けましたし、先生方の芸に対する思いに間近に触れて、他の人ができない経験ができましたね。

 

映画撮影は戸惑いの連続!?

シネマ組踊「執心鐘入」

─今回の『シネマ組踊』の演目「執心鐘入」は、組踊の創始者である玉城朝薫(たまぐすく ちょうくん)の代表的な作品ですが、印象的なシーンや難しいところはどこですか。

 

新垣さん:音楽の立場から言うと、最初の「金武節(ちんぶし)」という始まりの曲は斉唱なんですが、その後「干瀬節(ふぃしぶし)」という曲が3回続いて、すべて独唱です。ただ歌詞が3回とも変わるんです。同じ曲をどう変化を付けて演奏するのかが難しいところですね。

 

─3回とも違う場面でなんですか。

 

新垣さん:そうなんです。歌詞の内容も全く違いますし、声を強く出したり伸ばしたり、いろいろ工夫をしています。また、立方の演技に引き込まれて、気持ちが入っていって、演奏が変わることもありますよ。

 

佐辺さん:立方もそうです。演奏によって演技が変わることがありますね。

 

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─お二人とも、舞台では何度も「執心鐘入」を演じたり演奏したりしていますが、映画撮影の時は舞台との違いはありましたか。

 

佐辺さん:やっぱり違いますねぇ。何度も同じシーンを演じるので、気持ちを持続させるのが一番難しいですね。リハーサルの後カメラチェックをする時間など、待っている時間に何をしているのか最初はわからないので。1時間の舞台だと、緊張を保つのも大変なんですが、映画はカットごとに緊張が切れてしまうので、気持ちを持続させるのが大変でした。

 

─お二人は『シネマ組踊』の撮影は初参加ですか。

 

新垣さん:僕は2回目だったので、去年よりは楽でした。普段は通して演じるので、そのなかで気持ちの変化も出てきますが、映画ではカットごとに撮影するので、この場面だけで集中して気持ちを入れていくというのが最初は難しかったですね。

 

佐辺さん:製作スタッフも2回目なので、慣れてきていて、数日に分けて撮るように変えたそうです。

 

『シネマ組踊「執心鐘入」』は見どころ満載!

シネマ組踊「執心鐘入」

─映画ならではの見どころはどこですか。

 

新垣さん:映画は後ろや上からなど、いろいろなアングルから撮影しているので、とても興味深いですね。普段は客席や地方の座る場所からしか観ることができませんが、いつもとは違う角度から演じている様子を見ると、「こんな表情をしているんだ」という発見がありました。アップになるシーンもあって表情がよく見えるので、今から組踊を勉強しようという方には、参考になる部分があるかもしれませんね。

 

佐辺さん:クレーンで上から撮ると、すごく立体的に見えるんですよね。照明なども凝っていて、情景がわかるように工夫しています。夜暗いところから逃げる雰囲気、家の前に着いたシーンなど、普段の組踊にはない照明を使っているので、シネマならではの演出を楽しめると思います。

 

新垣さん:音楽は、普段と違う方法をいくつか取り入れました。「干瀬節(ふぃしぶし)」が3回入り、3回とも独唱なのですが、3回目の下句の部分は緊迫したシーンなので、斉唱に変えました。宿の女が狂乱するクライマックスのシーンも斉唱にして、迫力が出るように工夫しました。ただ、古典と違うので、もしかしたらお叱りを受けるかもしれませんけど…。

 


シネマ組踊「執心鐘入」佐辺良和さん
佐辺良和さん

 

─最後に、組踊を演じる立場のお二人から、浦添市を訪れる方にメッセージはありますか。

 

佐辺さん:9月3日は「組踊の日」として国立劇場おきなわでイベントが行われるなど、浦添市が組踊と関連していて、すごく嬉しく思っています。僕らが小中学校の頃は、なかなか組踊に触れる機会がなかったんですけど、今は国立劇場おきなわができて、子どもたちも組踊を観たりして、だいぶ浸透してきました。ですから僕たちも、もっともっと精進していきたいなと思っています。観光客のみなさんにも喜んでもらえるように頑張っていきます。

 

シネマ組踊「執心鐘入」新垣俊道さん
新垣俊道さん

 

新垣さん:浦添市は、組踊の父と呼ばれる玉城朝薫ゆかりの地でもありますし、国立劇場おきなわもあります。ぜひ一度浦添市に訪れて、劇場はもちろん、組踊のゆかりの地を訪れて、古に想いを馳せてほしいですね。実際に舞台やシネマを観ていただいて、いろいろな組踊の魅力を知っていただけたらと思っています。

 

「執心鐘入」あらすじ
美少年として名高い中城若松は、首里王府へ奉公に向かう途中、一夜の宿を乞います。女は、相手が若松だと知ると喜んで家に招き入れ、言い寄るのでした。女を罵倒して自尊心を傷つけてしまった若松は身の危険を感じ、女を振り捨てて末吉の寺の座主に助けを求め、鐘の中に隠れます。若松を追って寺にやってきた女は鐘にまとわりつき、ついには執着のあまり鬼女へと変身します。


プロフィール

シネマ組踊「執心鐘入」新垣俊道さん
名前
新垣俊道(あらかき としみち)さん
お仕事
沖縄伝統組踊「子の会」会長
沖縄県立芸術大学 非常勤講師
出身
南城市
年齢
35歳
Webサイト
メッセージ
組踊ゆかりの地・浦添市にぜひいらして、「昔はどんな時代だったのかな」と想いを馳せてみてくださいね。

 

シネマ組踊「執心鐘入」佐辺良和さん
名前
佐辺良和(さなべ よしかず)さん
お仕事
琉球舞踊 世舞会(せいぶかい)教師
沖縄伝統組踊「子の会」事務局長
沖縄県立芸術大学 非常勤講師
出身
那覇市
趣味
ドライブ
年齢
34歳
Webサイト
メッセージ
組踊に関するさまざまなイベントもたくさんありますので、観光客のみなさんもぜひ楽しんでくださいね。

※この記事はに作成されました。公開時点から変更になっている場合がありますのでご了承ください。