「シネマ組踊」それは奥深い琉球への入り口。

公開日 2015/02/06

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大好評の初回作に続き、ついに2作目の封が切られた『シネマ組踊』。2014年に公開された1作目「二童敵討(にどうてぃちうち)」に次ぐ本作は、組踊作品の中でもメジャーどころ、玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)の五番のひとつ「執心鐘入(しゅうしんかねいり)」が題材です。琉球王朝時代から受け継がれる伝統を大切にしながら、現代の人にもわかりやすくアプローチする内容は、まさに良いとこどりで、組踊のビギナーにも取っつきやすい仕上がり! 2015年1月21日に行われた「完成記念発表&特別試写会」に、一足お先に足を運んだうらそえナビスタッフが、その魅力をたっぷりお伝えしますよ~。

 

シネマ組踊に興味津々な人々で、会場はいっぱい!

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沖縄タイムスビルのタイムスホールにやってきました。やぁ、なんともご立派なホールの雰囲気に、テンションも上がります。今回は一般上映に先がけて行われる、芸能関係者や事業関係者向けの試写会。会場は来場者で埋め尽くされていました。みなさんのシネマ組踊への関心の高さが感じられますね。

そうこうしているうちに司会者のRBCアナウンサー・宮城杏里さんが登場。特別試写会のスタートです。ここで先にシネマ組踊について少し紹介しておきましょう。シネマ組踊とは、国の重要無形文化財であり、ユネスコにも登録されている沖縄の貴重な伝統文化「組踊」を、浦添市が事業主体となり、映像作品として分かりやすくフィルム化したもの。組踊ならではの琉球古語による台詞回し、舞踊、琉球古典音楽、そして美しい衣装などが、斬新なカメラワークで表現され、舞台とはまた違った角度から楽しむことができます。

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まずは浦添市より、市長の松本哲治の挨拶です。「シネマ組踊は、舞台鑑賞とは違ったアングルもあり、細かい舞台上の動きなど、いろいろな楽しみ方ができる作品に仕上がりました。また、本作『執心鐘入』は、女性の恋心・情熱が怨念へと変わっていくさまなど、作品自体の見応えもあるものです。観て“面白い”と思い、“生の舞台を観てみたい”というふうに、みなさまに組踊への興味をより深めていただきたいという思いで、製作を依頼しました」とスピーチ。

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続いて、大城直也監督と総合企画&プロデューサーのJTB沖縄 小宮啓明さんがご登壇。

 

小宮さん:私がシネマ組踊の言いだしっぺ、小宮です。

 

大城監督:クビにされず今回も無事監督をさせていただきました、大城です。

 

…と、来場者のみなさんの頬を緩ませてからのトーク開始です。

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大城監督:今回は、1作目の時に行った約1,000名の方のアンケートをもとに、厳しいご意見も参考にして改善を試みました。『執心鐘入』は、私自身が組踊で最初に観た作品で、宿の女を演じる立方(たちかた)の佐辺さんの演技に衝撃を受けた作品です。とても男性が演じているとは思えないほど。その女の色気が怨念へと変わるところは、サスペンス調の表現手法を取り入れてみました。

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小宮さん:私は生まれ育ちも本土で、最初に観た組踊は「雪払(ゆちばれー)」でした。今日は芸能関係者の方も多い中で大変失礼ですが…正直、最初の30分の記憶がないんですね(笑)。その後、長く沖縄に住んでいるうちに、組踊の成立背景や歴史を知って興味が深まりました。観光の方に知ってもらう機会を作ることや、長い時間をかけて興味を持ってもらうことが難しいと考える中で、映画化という方法がきっかけになればと思い、シネマ組踊を企画しました。

 

よ、待ってました!いよいよ本編開始~。

映画の前半部分では、組踊が誕生した背景について、ドラマ仕立ての分かりやす~い解説があります。これを知っているだけでも、舞台を観る時の思い入れが違ってくると思いますよ~。

 

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玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)

 

ここで組踊についてちょろっとご紹介。組踊の誕生は今から300年ほど前にさかのぼります。創始者は踊奉行(おどりぶぎょう)の玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)。1718年、中国からの冊封使を歓待するために披露されたのがはじまりといわれています。当時、琉球王国は、中国や日本、そして東南アジア方面 との交易を重ねていました。大切なお客様をおもてなしする、今でいう接待のひとつ? さぞかし重大任務だったに違いありません。

 

さてさて、気になる「執心鐘入」のストーリー。スタートから終わりまで、文字通り目が離せない内容でした。親が留守の夜、突然訪れた男に「泊めてほしい」と懇願され、困惑する宿の女。頑なに拒みながらも、かの有名な美少年・若松が相手と知り、家に招き入れる宿の女。眠る若松を控えめに眺めているうち、とうとう我慢できず「起きて。語り合いたいの」とせがむ宿の女。しかし若松にピシャリとふられ、その手を振り払われてしまう宿の女(泣)。「もう一緒に死ぬしかない」と決意する宿の女。寺へと逃げ込んだ若松を追いかけ探し回り、ついに鬼と化してしまう宿の女。…嗚呼、宿の女!

 

とまあ、ストーリーだけ追うと壮絶にも聞こえますが、ピンと張りつめた空気感の中、極限まで削ぎ落とされた所作と美しい舞踊、独特の台詞回しと古典音楽で表現するのが組踊。その奥ゆかしさ&深みといったら!

 

しかもこのシネマ組踊、通常の舞台では観ることができない、役者さんの表情や動作も見えるので、状況がとても把握しやすいのです。登場人物の立ち位置によって見えるアングルも計算されているし、飽きさせない工夫もそこかしこに散りばめられ、迫力もあります。もちろん、いつも舞台を観ている時のように、字幕の表示もされるので言葉の壁もひと安心。小学生にだって「いみくじピーマン」なんて、言わせませんよ!

 

意外にユーモアのあるシーンも盛り込まれていて、300年前の琉球人はもちろん、中国の方々も同じところでクスリとしちゃっていたのかな、なんて思うとなんとも感慨深いです。終いには、あーんな仕掛けやこーんな展開がかくかくしかじかありまして、物語は幕を閉じます。

 

…ちなみに、うらそえナビスタッフ的な発見でテンション上がったのは、鬼を退治する時のお経の入り出し!個人的に大好きな五大明王の面々を名乗り上げているのではありませんか! あの印象的だった掛け声は「ふどぉ~みょーぅおーぅ」だったなんて。字幕はありませんでしたが、口の動きや、声がバランス良く耳に入ったから気づけたのだと思います。シネマ組踊、さすがっ!

 

試写会後、突撃インタビュー敢行

さてっと…興奮のるつぼに巻き込まれ、ついつい個人的にツボポイントまで語ってしまったうらそえナビスタッフですが。。こっからは気を引き締めて、試写会終了後に突撃インタビューを行いました〜。

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まずは、組踊を上演している「国立劇場おきなわ」の川満さん。


―普段から本場の舞台をよく鑑賞している川満さんから見たシネマ組踊とは?


川満さん:普段舞台を鑑賞する時は、全体が観えるように、後ろの方の席から見るようにしているので、役者の表情までは見えないのですが、シネマ組踊だと、それが本当によく見えますよね。様々な角度からのカメラアングルや効果的なクローズアップのお陰で、それぞれの役者の視線や動きもよく見えますし、新たな発見が多くて勉強になりました。

 

―では逆に、生の舞台ならではの良い点のアピールもお願いします!


川満さん:そうですね、音声に関してはやはりどうしても生の演奏や歌声には勝てないので、役者さんが放つオーラやそれを見つめる観客の皆さんの熱気と緊張感など、空間をまるごと楽しめる舞台を観に、ぜひ劇場にも足を運んでほしいですね。あとは、実際の衣装の鮮やかさも、ぜひ生で見てほしいです。例えば若松と宿の女の二人が出揃うシーンは、二人の衣装が並ぶと、色彩がワッと華やかになるので、私は好きなんですよね。また、国立劇場では学生や初心者へ向けた組踊の鑑賞教室をやっています。毎回好評なので、そちらもぜひ観に来てください。

 

―組踊への熱い想いをお願いします。

 

川満さん:組踊は、創られた背景とかを考えると、また見方も違ってきますよね。単なる娯楽ではないんですよね。国と国との外交ごとでしたから…それこそ命がけで踊っていたんじゃないかと思うんです。そう思うとロマンがあって自分なりの楽しみ方が広がります!ちなみに、これは私の勝手な憶測なのですが、ウチナンチュの余興や芸能が今でもすごいのは、そのDNAをウチナンチュが引き継いでるからではないかと思うんですよね。おもてなしの精神を(笑)。

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続いて、小宮啓明プロデューサー

 

―この構想はどのような経緯で浮かんだのでしょうか?


小宮さん:沖縄の映画館で上映されていた松竹の「シネマ歌舞伎」というのを観たことがあって、その時に、舞台を映像化するってとても可能性があることだなって思ったんですね。それで組踊でもやりたい、と思ったのがきっかけです。

 

―映画だからできることとはなんでしょう。

 

小宮さん:本来、組踊観賞には想像力が必要なんですよね。“組踊の約束事”を観客に知識として持ってもらった上で、その想像力を働かせて見てもらうことを前提にできている。300年も前の作品になるわけですが、その頃の人々は想像力が豊かだったと思うんです。でも色々な情報があふれている現代では、与えられたものを受け取るのに忙しく、想像力はその頃に比べると失われつつあるのではないかと。また舞台の背景や慣習なんかも今と違うでしょう。だから現代の映像の撮影方法や表現方法をプラスすることで、現代の人に見てほしいところを理解してもらうことができると思います。そこはもう大城監督を信頼してお願いしています。

 

―今後も作品は続いていくのでしょうか

 

小宮さん:今後も続けていきたいと思います。まずは朝薫の五番(*)は全てやりたいですね。5作品ともストーリーやテーマが異なっていてバランスが良いんですよ。組踊は県外の方々はもちろん、県内の方でもまだまだ浸透していないと思うので、みなさん、ぜひ、騙されたと思って観に来てください(笑)。

*朝薫の五番…玉城朝薫が残した、「二童敵討」「執心鐘入」「銘苅子」「女物狂」「孝行の巻」の5作品。

 

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最後にお忙しそうな大城直也監督! 一言お願いします〜っ!

 

大城監督:前作を観ていただいた方の意見では、もっと自由に“映画”を撮っていいんじゃないかというご指摘があったので、前作よりも色々チャレンジしてます。もちろん、作品自体の世界観も前回と違うし、ストーリーやキャラクターも分かりやすいというのもありますけどね。今回ご覧になっていただいた方々は芸能をやっていらっしゃる方々やメディアの関係者が多いというのもあって、緊張しました。今作でも厳しい意見もいただきながら、次に繋げられればと思います。

 

▼大城監督の前回のインタビュー記事は、以下からどうぞ。
監督が語る『シネマ組踊・執心鐘入』の裏側と組踊の未来

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というわけで、シネマ組踊「執心鐘入」の見どころ、十分ご理解いただけましたでしょうか? いよいよ2月7日から無料上映会が始まりますので、みなさん、ぜひ足を運んでみてくださいね。沖縄が誇る伝統芸能、組踊の世界に、まずはここから一歩を踏み出してみませんか?

 

DATA

シネマ組踊「執心鐘入」完成記念 無料上映会
http://www.urasoenavi.jp/event/2015010700022/

 

開催日

2/7(土)、8(日)、14(土)、15(日)、21(土)、22(日)

 

上映時間・演目

1回目 13:00~ 「執心鐘入」
2回目 15:00~ 「二童敵討」
3回目 17:00~ 「執心鐘入」
開場:上映開始1時間前(上映時間 約1時間)

 

料金

入場無料、先着順

 

場所

2/7(土)、8(日) 浦添市民体育館1階 武道場
2/14(土)、15(日) 浦添市社会福祉センター 中研修室
2/21(土)、22(日) 浦添市民体育館1階 武道場

 

問い合わせ

シネマ組踊上映会事務局
098-862-8285
facebook ぺージはコチラ

 

地図

浦添市民体育館1階 武道場・浦添市社会福祉センター

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