親子のための組踊鑑賞教室「女物狂」鑑賞レポート
公開日 2017/08/24
先日、国立劇場おきなわの夏休み恒例企画「劇場バックステージツアー」へ参加してきた うらナビスタッフ。(そのときの記事は、コチラ)
今回は、親子のための組踊鑑賞教室にはりきって参加してきました!前回、ワークショップで先生方から教わった「女物狂」からの台詞「ありよーい!ありよーい!」のシーンや、踊り(所作)、地謡の音楽表現を楽しみに、「組踊版・シンデレラ」と「女物狂」を観てきましたよ~!
第一部「組踊版・シンデレラ」
(国立劇場おきなわ:提供)
さすが夏休み~。上演前は楽しみにしている親子の声でにぎやか!しかし、拍子木が鳴り響き、魔法使い役の玉城さんが登場すると途端に劇場が静まり返りました。そして、柔らかな胡弓の音色に合わせ、方言でシンデレラの説明をする魔法使い……これは最初から難しいぞ。このまま物語が始まるのかな……そう思った瞬間!「はい、みなさん、お疲れ様でした~!」と、魔法使いはいきなり現代モード。そこからは観客を交えての軽快なトークが始まり、前知識として歴史や楽しみ方、鑑賞のポイントをわかりやすく丁寧に説明してくれました。(観客にステキな魔法もかけてくれましたよ♪)
そして、ここで1人だけ「シンデレラ」に出演できるとのお知らせが!見事、シンデレラの座を射止めたのは、ひが ここあ さん(7歳)。いきなり舞台に立つ度胸があってスゴイですね~!ここあさんがどんなシーンで出演するのかはお楽しみに~。
(国立劇場おきなわ:提供)
さて、名作「シンデレラ」を、組踊で表現すると堅苦しくなるんじゃない?そんな余計な心配は無用だったことが冒頭からわかります。
まずは、琉装&井戸の前で「私はシンデレラ」と名乗るギャップにジワジワきます。意地悪な継母と義姉妹がウキウキとメイクをし、地謡が「これからダンスパーティー!イケメン王子に会いに行くの~♪」と、三線を奏でて歌うギャップにも妙な面白さがこみ上げます。極め付けは、シンデレラの心の声を表したシーン。留守番を命じる継母に「チョームカつく!」着物を自慢する義姉妹に「いじわるネーネー、あっかんべー!」と女子の本音炸裂!組踊のイメージを覆す斬新な表現にみんな大爆笑。しかし、パーティーに行けない悲しみを「悲しい心の表現は~音楽チームの仕事です~♪」と、地謡を紹介しながら、しおらしくまとめるところはさすがでした!
(国立劇場おきなわ:提供)
ダンスパーティーの主役となったシンデレラ(ひが ここあさん)。こんな可愛い姿で登場です!王子様がメロメロになったのもわかりますね♡これまで敷居が高いと思っていた組踊ですが、演出には観客と舞台が一体となるような工夫が凝らされていたため、子どもたちはすっかり夢中に!随所にユーモアを交えながら、組踊の「見どころ」や、「約束事」を教えてくれる絶妙なストーリーが展開され、義姉妹が、王子様にフラれて悲しむハグシーンや、王子様がシンデレラを探しまわるシーンにも、さりげなく組踊の「約束事」が表現されていました。最後はめでたくハッピーエンド!全員で優雅に踊るシーンは圧巻で、琉球舞踊の魅力と美しさを再認識。はじめて組踊を観る方も十分親しむことのできる見事な内容でした。
第二部「女物狂」
(国立劇場おきなわ:提供)
子を思う母の深い愛が描かれた作品「女物狂」。前回参加したワークショップで、カマを振り上げたり「ありよーい!ありよーい!」という台詞を練習したため、冒頭からとても楽しめた うらナビスタッフ。ほかの参加者もきっと同じように感じていたのではないでしょうか。人盗人が子どもをだますためのやさしい歌声も、このあとの展開を知っているからこそ恐怖に感じ、おどされて連れ去られる亀松(子ども役)に「亀松!だまされちゃダメ、早く逃げてー!」と、感情移入。寺の座主と小僧の機転の利いたやりとりで保護された時も、よかったね~とひと安心。もう、気分は亀松の母のような親戚のオバちゃんような……
(国立劇場おきなわ:提供)
一方、大切な子どもがさらわれ「気がふれていく」母親を表現するシーンも見事です。普通なら発狂したり泣きわめく姿を想像する方が多いかもしれませんね。うらナビスタッフもそうでした。ですが、それがまったく違うことに驚きます。なんと母親は、「狂い笹」(気がふれたことを表現)を持って、静かに辺りを探してさまようのです。子どもたちに「女の物狂いが踊ってくるぞ。見物だぞ。」と、からかわれてもひたすら「すり足」。その寂々たる表現が、母親のあふれんばかりの悲しみ・苦しみ・怒りを余計に際立せていました。しかし、亀松に会えない悲しみがピークに達したとき、笹を投げ捨て座り込み、感情をあらわにするのです。母の心の機微が繊細に表現されており、強く胸を打たれました。
(国立劇場おきなわ:提供)
そして無事に亀松との再会を果たした時、すぐに喜ぶと思いきや、じっと亀松を見つめる「間」があるのです。目の前の現実を理解し、正気に戻るまでの想いがこの間に込められていることがわかります。そして、感動のハグシーン。寺の座主と小僧に礼をして、二人で仲良く帰る姿に観客は拍手喝采。「今日の嬉しさは何にたとえよう 花のつぼみが露にあたったようだ♪」地謡の奏でるハッピーな音色に感動が押し寄せるなか、幕はおりたのでした。
終演後は「組踊版・シンデレラ」、「女物狂」の出演者がロビーで写真撮影に応じてくれました。
さて、娘と2人で「親子で組踊の世界にふれる夏」を思いっきり満喫した うらナビスタッフですが、今回「劇場バックステージツアー」・「親子のための組踊鑑賞教室」に参加して印象的だったのは、大人も子どももみ~んな笑顔だったことです。そして、組踊の魅力や奥深さを伝えたいという運営側の皆さまの熱意を感じました。世界に誇る伝統芸能を、ここ「浦添市」で鑑賞できるって、素晴らしいですよね!これを機会に、もっと組踊のことを勉強していきたいと思った うらナビスタッフでした。
国立劇場おきなわでは、この後も公演スケジュールが目白押し!皆さまもぜひチェックして組踊の世界を楽しんでくださいね。
作品名 |
親子のための組踊鑑賞教室 |
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配役 |
【第一部】組踊版・シンデレラ 脚本・演出 嘉数道彦 魔法使い 玉城匠
【第二部】組踊「女物狂」 作 玉城朝薫 人盗人 天願雄一 |
地謡 | 歌三線:新垣俊道 歌三線:謝敷アンヘル 歌三線:棚原健太 箏:大城礼乃 笛:豊里美保 胡弓:前田博美 太鼓:横目大通 |

※この記事はに作成されました。公開時点から変更になっている場合がありますのでご了承ください。